スサノヲとアマテラスの誓約(うけひ)で生まれた三人の娘と五人の息子ですが、私は、三人の娘はスサノヲとアマテラスの間の娘で、五人の男の子の父親はそれぞれの名前から、アメノオシホミミ・アメノホヒはA、アマツヒコネ・イクツヒコネはB、クマノクスビはC、 という男性であったのではないかと考えています。
クマノクスビという名前から、男性Cはスサノヲであるとも考えられます。
しかしながら、古事記にはスサノヲとアマテラスが、弟と姉の関係になるように書かれています。兄と妹でもなく、赤の他人でもないのです。
アマテラスは姉ですから、邪心がないと証明された弟を温かく見守ることになります。
これに甘えたスサノヲは、田の畦を壊し、糞をまき散らし、挙げ句の果てには姉の機織り小屋に馬の皮を剥いで放り込んだと書かれています。
つまりとんでもない乱暴狼藉の限りを尽くしたとしているのです。
本当にとんでもない乱暴狼藉でしょうか?
畦を壊したり糞をまき散らす行為は、悪ガキの行為としては大人しい方じゃないでしょうか。
皮を剥ぐというのは、現代人の我々からすれば残虐きわまりないと感じますが、獣を捕らえて食料としている時代では「皮を剥ぐ」のは見慣れた作業だったはずです。今でも猟師は、動脈を切って血抜きをしますし、獲物の皮も剥ぎます。
ただ生きたままの馬の皮を剥ぐというのは度が過ぎますが、実際問題として生きた馬が大人しく皮を剥がれることはないでしょうから、強さと乱暴の比喩的表現と解釈すべきです。
瀕死の馬なら可能かもしれません・・・
それを機織り小屋に投げ込めば、中の女の子達が驚いたことは想像できます。しかし、今の女の子じゃないのですよ。獣を殺したり皮を剥ぐのを見ながら育っているのです。ショック度はかなり低かったはずです。
その中の一人が死んだと書かれていますが、その死に方が不自然です。機織りに使う道具が女陰(ほと=女性器)に刺さったのです。現実的にはあり得ない死に方ですが、神話ではこのパターンが多々あります。
いずれにせよ、死者一人という騒動を起こしたのです。
…つづく