手間で瀕死の重傷を負い、母親と二人の女神の手により回復したオオナムチは更に山奥へ逃げます。
古事記はその場所を記していません。
しかし『日野郡誌』に、「鳥取県日野郡日南(にちなん)町上石見(かみいわみ)の「大石見(おおいわみ)神社」に、オオナムチがヤガミ姫と隠れ住んだ」との伝承があると記されています。
大石見神社
上石見は鳥取県の最南端の山奥にあり、中国山地の分水嶺です。日本海側から数十キロ登ってきた最高地にできた盆地のような場所です。
今は田畑が広がっていますが、当時は深い森に覆われていたはずです。
オオナムチはここまで逃げ、隠れ住んでいたのですが見つかったのでしょう。
現在その一帯に巨木はありませんが、ここ大石見神社の境内にだけ、巨木が残っています。
境内の大イチョウの木。
鎌倉で倒れた木と同じくらいの大きさだそうです。
具体的にオオナムチが隠れていたとされる場所は伝えられてはいませんが、その高原のどこかまで逃げてきたと思える所ではあります。
古事記には「大木を切り倒し、その木にくさびを打ち込み、オオナムチをその割れ目に入らせるとくさびを引き抜いて殺した」と記されています。
つまり大木の割れ目に挟まれて殺された訳です。
しかしここでも母親のサシクニワカ姫が見つけ出し、木を裂いて助け出して蘇生させたとしています。
ここでは、助けたのは母親一人です。そして「ここにいたら八十神達に滅ぼされる」と言って、木国(きのくに)の大屋毘古(おおやびこ)のところへ逃がすのです。
…つづく