アマテラス≪その二≫
アマテラスの三度目の登場は、葦原中国(あしはらのなかつくに)平定の場面です。
冒頭、いきなり「水と緑溢れる豊饒の地(=葦原中国)は、私の息子アメノオシホミミが治める国」とアマテラスが言った、との記述で始まります。
そして「天降(あまくだ)したまひき」、つまり息子を降臨させたと書いてあります。
高天原=天上界から庶民(国つ神)の住む地上界へ行かせたということですが、ここでは神を人間として考えていますから、高天原族の住む地から他の部族の住む地に行かせたと理解します。
ところで、アマテラス達の住む高天原はどこにあったのでしょうか?
天上界ということになっていますから、仏教なら極楽・キリスト教ならエデンの園のような所と想像しますよね。そんな素晴らしい所に住んでいるのであれば、例え「水と緑溢れる豊饒の地」であっても息子を行かせることはないと思うのですが・・・・。
実はこのストーリー展開には伏線があります。
アマテラスからはちょっと外れますが、説明します。
以前「スサノヲは本当に悪か?【4】」と「古事記に登場する神々の謎【9】大宜都比売神」で書きましたが、オオゲツヒメの死です。高天原を追放されたスサノヲが、オオゲツヒメの所に立ち寄って食べ物をもらう記述があります。
文面通りに解釈すると、『高天原の住民は、オオゲツヒメから食料の提供を受けていた』となるのですが、オオゲツヒメひとりでの提供は無理でしょう。ですからオオゲツヒメとは、高天原で食料生産・調理にたずさわっていた職能集団の総称と解釈すべきではないでしょうか。
そのオオゲツヒメをスサノヲが殺し、彼女の遺体から様々な農作物が現れ、それらを集めさせて種としたのが出雲の母神であるカムムスヒの神と書かれているのです。
私はこの部分を、スサノヲがオオゲツヒメと総称される職能集団を滅ぼしたのではなく、『何らかの理由で、高天原地域での食料調達が困難になった』と解釈してみました。
何らかの理由とは、地震・風水害・干ばつといった自然災害だったのではないでしょうか。
ですから高天原=アマテラスは、自然災害が少なくて食料生産に適し、なおかつそのための労働力が豊富な地を必要としたと考えられます。アマテラスは、高天原族の存亡を賭けて長男を送り込んだのではないでしょうか。
・・・つづく