―「神話部分」を読む ― 天照大神と須佐之男命 ⑥ 天の石屋戸 – 1 –
爾速須佐之男命。白于天照大御神。
(ここにハヤスサノヲの命、アマテラス大御神にまをしたまはく。)
そこでスサノヲがアマテラスに言った。
我心清明故。
(あが心 あかきゆえに)
私に邪心がないから
我所生之子得手弱女。
(あがうめりしみ子 たわやめを、えつ。)
私の(持ち物から生まれた)子供は、優しい女の子です。
因比言者。
(これによりて まをさば)
この事実に基づいて言えば
自我勝云而。
(おのづから あれ勝ちぬと いひて)
即ち私の勝ちですと言って
日本書紀では、男子が邪心無き証となっている。だがここで女子としているのは発想が違うからである。天照大御神は高天原を男のように支配する立場であり、須佐之男は根の国に下るのだから女に従う立場となる。だからここで女子を得たことは、天照大御神に服従し、敵意がないことの証となるのだ。ここで単に女子としないで手弱女としているのも、同じ理由である。
男尊女卑の時代ですから、通常は男子を得た方が勝ちだったようです。
宣長は、ここでは邪心の有無を調べているのだから「男子は好戦的だから邪心あり」「女子は服従を意味するから邪心無し」と強調しているようです。
於勝佐備。離天照大御神之營田之阿埋其溝。
(かちさびに、アマテラス大御神の みつくだの あ はなち みぞうめ)
勢いづいて(調子に乗って)アマテラスの田の畦を壊して溝を埋め、
佐備(さび)=勢い良く前進する意味
阿(あ)=畦(あぜ)
亦其於聞看大嘗之殿屎麻理散。
(またその おほにへきこしめすとのに、くそまりちらしき。)
祭壇に糞をまき散らした。
大嘗之殿=貴人がその年に獲れた新しい穀物を食べる祭壇
・・・つづく
※注:
青字 … 本居宣長『古事記伝』より
赤字 … 古事記おじさんの見解です。