―「神話部分」を読む ― 天照大神と須佐之男命 ⑭ 五穀の起源 – 2 –
而大氣津比賣自鼻口乃尻。
(ここに、おほげつひめ 鼻、口、また尻より、)
そこでオオゲツヒメは、鼻や口、また尻から、
種種味物取出而。
(くさぐさの ためつものを、取りいでて、)
品々の美味い食べ物を取り出して、
味物(ためつもの)=種々之珍味=美味(うましき)食物(おしもの)=おいしいもの
種種作具而進時。
(くさぐさ 作りそなへて たてまつるときに、)
色々に調理して提供した時に、
速須佐之男命、立伺其態。
(スサノヲの命 そのしわざを、立ちうかがひて、)
スサノヲは、その様子を隠れ見ていて、
立伺(たちうかがひ)=隠立(かくしたち)て、物の隙(ひま)などより窺(うかが)ひ観たまうなり=物陰から覗き見る様子
爲穢汚而奉進。
(きたなきもの、たてまつると、おもほして、)
穢れたものを提供していると受け止めて、
乃殺其大宜津比賣神。
(すなはち、そのおほげつひめの神を、殺したまひき。)
オオゲツヒメを殺してしまった。
(スサノヲは)悪事に対する解除(はらひ)を既に終えているが、依然として悪心が清められてはいない。だが(オオゲツヒメを)殺したことで五穀の種が現れたのであることは『善は悪から生じる』道理である。かつて黄泉の穢れを祓うことでアマテラスなどの『善なる神』が出現したことと同じ道理である。
宣長は「悪事」=「善の萌芽」発想で終始一貫しています。
・・・つづく
※注:
青字 … 本居宣長『古事記伝』より
赤字 … 古事記おじさんの見解です。