古事記おじさんの『21世紀の視点で古事記を読む』【82】

―「神話部分」を読む ― 大国主神 ⑥ 根の堅州國 – 1 –

御祖命告子云。
(みおやのみこと み子に のり給はく。)

母が息子に言った。

参向須佐能男命所坐之根堅州國。必其大神也。
(スサノヲの命の まします ねのかたすくに に まいでてよ。 かならず その大神 たばかり給ひなむ とのり給ふ。)

「スサノヲが住む根のカタス国に行きなさい。彼は善処してくれるでしょう。」

須佐能男命は「母の住む根堅州國(ねのかたすくに)に行きたい」と云い、結局追放されておりこの時点ではその国にいた。

議也(たばかりたまひなむ)=取り計らってくれる。

詔命参到須佐之男命之御所者。
(かれ みことの まにまに スサノヲの命の みもとに まいたりしかば。)

(オホナムヂが)言われた通りスサノヲの所に行くと、

須勢理毘賣出見。爲目合相婚
(その みむすめ スセリ姫、いでみて。まぐはひして みあひまして。)

彼(スサノヲ)の娘であるスセリ姫が出てきて対応した。
(すぐ後に夫婦を前提とした記述があるので、互いに一目惚れして関係を持ったと解釈すべき)

須勢理毘賣(すせりびめ)=名の意味は「進む(積極的)」。それは(コノハナサクヤ姫のように父から勧められるのではなく)この姫の方から進んで夫に嫁ぐという名。
また祓除(はらひ)と関連した考え方もある。
大穴牟遅神が様々な困難に遭遇するのは、祖先である須佐之男命に起因している。
黄泉の穢れも大方無くなっているが、まだ名残があった。
ところがここに逃げて来て、この姫の計らいで難を逃れ・利を得て・功績を立てるのは、この姫が罪科(つみとが)を取り払うことによる。

爲目合而(まぐはいして)=合(ぐはひ)は「物の合うこと」の意味で、直訳すれば「目を見合わす」。
男女がことさらに目を合わす場合は「互いに思い合う状態」であるから、その先の関係を意味している。しかしここではそのあとに相婚(みあひ=結ばれる)とあるので、
この場合は「目を合わす」というだけの意味。

還入白其父。言甚麗
(かへり入りて そのみ父に、いと うるはしき神 まいきつと まをし給ひき。

彼女は建物内に戻り、父親に「とても素敵な方がいらっしゃいました」と伝えた。

爾其大神出見而。告此者謂之葦原色許男
(かれ その大神 いでみて、こは アシハラノシコヲと いふ神ぞと のり給ひき。)

そこでスサノヲが出てきて(彼を見て)「これはアシハラノシコヲという人物だ」と言った。(この時点でスサノヲは娘の気持ちと二人の関係を察知していた)

喚入而。令寝蛇室
(やがて 呼び入れて、その へみの むろやに 寝しめ給ひき。)

そして彼(オホナムヂ)を屋敷内に呼び入れ、そこにある蛇(マムシ)の洞窟で一夜を過ごすよう命じた。(危険な洞窟で過ごさせ、王の娘婿としての資質を試した)

其(その)=其處之(そのところの)と、「須佐之男命の居住地内」という場所を意味している。
蛇(へみ)=小蛇であるが、あとのムカデやハチといった刺す物を考えればマムシであろう。

・・・つづく

※注:
青字 … 本居宣長『古事記伝』より
赤字 … 古事記おじさんの見解です。

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