特集:入門編「古事記って、なぁに?」其の二

さて、黄泉国(よみのくに)から現世に戻ったイザナギはというと・・・
黄泉国の穢(けが)れ、汚れを洗い清める「禊 祓(みそぎはらえ)」をしていました。

そこでもたくさんの神を生みましたが、最後に左目を洗うとアマテラスが、右目を洗うとツクヨミが、鼻を洗うとスサノヲが生まれました。

この三人を三貴子(さんきし)といい、イザナギは三人に役目を与えます。
アマテラスは「高天原(たかまがはら)」、ツクヨミは「夜の世界」、スサノヲは「海原(うなばら)」を治めることとなったのです。

ところがそのスサノヲが困ったさんで、三貴子の中でひとりだけ、父イザナギから言いつけられた仕事もせず、いい歳した青年になってもただ泣きわめいて暮らす日々。
その泣き方が凄まじく、山の緑は枯れ、川や海の水も干上がるが如く。 そのため悪神や悪霊が騒ぎ出し、禍(わざわい)がいっせいに起こりました。

イザナギが「なぜ務めも果たさず泣いてばかりおるのだ?」と尋ねると、「死んだお母さんのいる根の堅州国(ねのかたすくに)に行きたいからだよう」とスサノヲ。
怒ったイザナギに、スサノヲは追放されてしまいました。

そのままおとなしく出ていけばいいものを、姉のアマテラスに説明しようと、スサノヲは高天原へ出かけたのです。
静かに行けば良かったのですが、大地を震動させ、すごい音を立ててやって来たもんだから、あら大変。
アマテラスは、「スサノヲが国を乗っ取りに来た」と思い込み、完全武装の雄々しく猛々しく勇ましい姿で待ち受けます。


「コラぁ スサノヲ!! お前、何しに来たんじゃあ!!」

「姉さん、ちがうよ。悪いことなんか何も考えちゃいないよ。親父が泣く訳を聞くもんで、おふくろのところへ行きたいだけだって言ったら、追い出されちまってさ、だから姉さんにそのこと言っとこうと思ってやって来たってわけ。それだけだよ。」

「なんだとぉ? そんなこと言ってお前、どうやって証明する気だ!?」

アマテラスはまるで信じてくれません。
そこでスサノヲは誓約(うけい)をして子供を生もうと提案します。
誓約とは、あらかじめ決めた答えが出るかどうかで正しいか間違っているかを判断することです。
そしてその結果、スサノヲの持っていた剣からやさしい女の子が生まれ、スサノヲの潔白が証明されました。のはいいけど、ここからいけません。

誓約に勝って心の潔白が証明されたと大はしゃぎのスサノヲは、調子に乗って羽目をはずし、大暴れしてしまうのです。
田んぼをめちゃくちゃにし、排泄物をまき散らし、馬の皮をはいで機織(はたお)り小屋へと投げ込み、死人まで出る始末。

アマテラスは恐ろしくなり、天の石屋(あめのいわや)に隠れてしまいました。
すると天上界も地上界も、真っ暗な闇に覆われてしまったのです。

わあ大変。たくさんの神さま方が知恵を絞り、いろいろと骨を折って、何とかアマテラスを石屋から引っ張り出すことに成功、世界にはまた光が戻ってきたのです。

ですがスサノヲはこの騒ぎの罰として、たくさんの品物を差し出し、髭と爪を切られ、今度は罪人として高天原から追放されたのです。

でも、ちょっと変。
騒ぎの原因を作ったのはアマテラスの方じゃないのかな。
あんまり疑うからこんなことになっちゃったんじゃないのかなぁ・・・。


まあそれはともかく、スサノヲが母のいる根の国に行くために高天原から降りた場所は、出雲国(いずものくに)の「肥の河上(ひのかわかみ)」の鳥髪(とりかみ)というところです。
これは今の船通山(せんつうざん)という山の頂上で、ちょうど鳥取と島根の県境にあたり、地名も、山へ登る道も、両県側にそれぞれあります。

入門編・船通山
船通山(せんつうざん)
(山頂の鳥居)
・鳥取県日野郡日南町上萩山
・島根県仁多郡奥出雲町竹崎

入門編・船通山(島根県側登山道)
島根県側登山道

スサノヲは島根県側の道を下りました。
その途中で、川に流れる箸(はし)を見つけるのです。
箸が流れているということは、上流に人が住んでいるということですね。

そこで出会ったのが、泣いている老夫婦と、カワイイ娘です。
なぜ泣くのか尋ねると、「娘が大蛇(おろち)に食われるから」と言います。
「よおし、俺がそいつをやっつけてやるから、そのコ、嫁にくれろ」ということになり、かの有名な「八岐大蛇(やまたのおろち)」退治となるのです。


娘の名は、クシナダ姫。スサノヲは娘をクシに変えると、自分の髪に差し、颯爽(さっそう)と大蛇退治に向かったのです。
ちょっと、ヒーローっぽくなってきましたね。

八岐大蛇とは、「目はほおずきのように赤く、八つの頭と八つの尾を持ち、背にたくさんの木を生やし、八つの山と谷にまたがるほどの長いボディで、腹はただれていつも血がにじんでいる」という恐ろしーい怪物(モンスター)。

こんな化け物を、スサノヲは一体どうやって仕留めたのか!?
それが、絶体絶命の危機などなくって、案外あっさりだったんですけど、娘の両親に強い酒を造らせて、大蛇が酔っ払ったところを、剣(つるぎ)でずたずたに切り殺して、おしまい。
尾っぽのひとつから草なぎの大刀をゲットし、アマテラスに献上しました。

ただの暴れん坊ではなく、実はとっても知性派?でもあるスサノヲ。
退治のあとは、「気分がすがすがしい」と須賀(すが)の地に新居を建て、わき上がる雲を見て、三十一文字(みそひともじ)の歌を詠んだのでした。
これが、和歌のはじまりといわれています。

入門編・須我神社
須我(すが)神社
島根県雲南市大東町須賀


古事記では、スサノヲやアマテラスは禊祓(みそぎはらえ)でイザナギの目や鼻から生まれたとしています。
何しろ神さまなのですから、神さまらしい生まれ方にしておかなければなりません。
でも出雲地方には、実在の人物としてのお話があります。
スサノヲの生まれた場所(石上(いしがみ)神社)、育った場所(韓竈(からかま)神社)と伝えられている神社があるのですよ。

入門編・石上神社
石上(いしがみ)神社(宇美神社)
島根県出雲市塩津町

入門編・韓竈神社
韓竈(からかま)神社
島根県出雲市唐川町

しかもそこに伝わるお話は、とてもリアルなのです!
詳しくは「山陰の古事記謎解き旅ガイド」や、「古事記おじさんの日本のはじまり探し」をご覧ください。

特集:入門編「古事記って、なぁに?」其の三 へつづく・・・

【特集】古事記入門編「古事記って、なぁに?」
 https://www.kojinazo.net/?p=86

■特集:入門編「古事記って、なぁに?」其の一
 https://www.kojinazo.net/?page_id=1329

■特集:入門編「古事記って、なぁに?」其の二
 https://www.kojinazo.net/?page_id=1333

■特集:入門編「古事記って、なぁに?」其の三
 https://www.kojinazo.net/?page_id=1335

■特集:入門編「古事記って、なぁに?」其の四
 https://www.kojinazo.net/?page_id=1337


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。